ノンクリスチャンがゴスペルを歌っていいのか!?

筆者がNYのブルックリンに滞在して、ヒスパニック系の教会に通っていたとき、教会を通じて仲良くなった現地の友人に驚かれたことがある。

「日本にはゴスペルのスクールがあるの!?信じられない!」

1990年代のゴスペルブームによって、今やゴスペルは日本でもメジャーな音楽となったが…

現在日本では、ゴスペルが英会話やヨガのように、一つの「習い事」として定着してきたように思うが、習い事としてゴスペルを歌うのは日本だけ(もしくは数カ国だけ)の特殊なケースのようだ。

その特殊なケースであるが故か、よく筆者の生徒(ノンクリスチャン)から「ノンクリスチャンなのにゴスペルを歌っていいか迷う時がある」と言われることがある。

確かに宗教音楽であるゴスペルをノンクリスチャンが歌うべきか、クリスチャンはそんな自分たちに実は怒っているのではないか、そう不安に思う人も少なからずいるだろう。

しかし筆者の結論は、「もちろんイエス(歌ってもいい)」である。

これには筆者なりに2つの大きな理由がある。

まず宗教的に。
クリスチャンであるかどうかは本来本人と神様の間の関係性であって、他人がそれについてとやかく言うものではないのである。
(ブルックリンの教会での聖書勉強の先生曰く。もちろんこれは宗派にもよるだろうし、とやかく言う人は実際いるが)

なのでクリスチャンでなく歌うことにすごく抵抗があるなら、単純に洗礼を受けてクリスチャンになればいいし、そんなに抵抗がないならすでに神様との関係性は良好であるから、あえて変化する必要はない。

また文化として。
冒頭触れたように、「ノンクリスチャンがゴスペルを歌う(習う)」ことは非常に特殊なケースである。
しかしそれは決して悪いことではなく、筆者からすれば宗教や観念を抜きにして音楽の魅力そのものを評価し、ひいては現在一つの文化にまで発展・昇華させた、「ノンクリスチャンによるゴスペル」は日本人の誇るべき特性の一端である。(もちろんその上で宗教や観念について敬意を払うべきではあるが)

これら2つの理由からして、「ノンクリスチャンがゴスペルを歌うこと」は、宗教的に咎められるものではないし、むしろ日本人の特性として誇るべき文化なのである。

冒頭の会話には続きがある。

(友人)「日本にはゴスペルのスクールがあるの!?信じられない!」
(私)「そうなんだよ!日本ではゴスペルの音楽だけを抜き取って、一つの特殊な文化を作ったんだ!すごいでしょ!」

多くのノンクリスチャンでゴスペルを歌う人が、
自分たちの文化に誇りを持って欲しいと願ってやまない。

長谷川繁
ゴスペル・デイレクター

*REVOLVER dino network 投稿 | 編集